私は1980年のカンボジア難民救援で初めて現地を訪れ、日本にはまだ海外救援をする民間団体がないころから活動を続けてきました。当時は政府のやる仕事だから、民間は必要ない、日本にももっと危機的な問題があるのになぜ外国なんだ?との指摘もいろいろあり、活動を充実させながら、組織も作ってゆかなくてはならない厳しい期間を経てきました。それでもSVA(シャンティー国際ボランティア会)は何とか日本の民間団体の中では3本の指に入る団体にまでたどり着きました。そして私は常務理事を勤めさせていただけるようになりました。もっと国際的な勉強や、センスを養う必要に迫られ、苦しいですがやりがいがあり、このように自分を磨く場所に立たせてもらえていることを大変うれしく思っています。
昨年9月今年度の予算を決める会議にアフガン事務所のワヒド副所長が日本を訪れました。3年前アフガンに行って、初めて会ったのに何も違和感なく話せる不思議な人でしたので、再開を大変うれしく思い、つい話し込んでしまいました。
昨年一時マスコミをにぎわせた、韓国のキリスト教系のボランティアグループの拉致事件について話してくれました。マスコミ報道では彼らを拉致したのはタリバンとのことでしたが、ワヒドさんが言うには、アフガンのタリバンではなく、外国から入ってきたタリバンで、アフガンには関係ない人たちがやっているとのことでした。
アフガンはここ数十年、ロシアとの抗争、独立のための内戦、タリバンの支配、多国籍軍の進攻と戦乱が続きました。どれも皆アフガンが独立しようとする戦いを利用しようとする外国の利権争いが、アフガンを戦争に駆り立てたのです。世界ではアフガンは戦争の国、アフガン人は好戦的というけれども、外国がそう仕向けるから戦争が起こる。ぜひ本当のアフガン、本当のアフガン人のことを知って欲しい、と彼は語っています。
私たちはアフガンに事務所を開設して5年になります。すばらしい優秀なアフガン人スタッフと共に農山村に入り込んで、そこに住む住民と一緒に、学校や図書館、コミュニティーセンターを作り、アフガンの昔から伝承されてきた本を作り、伝統的な社会や文化を彼らと共に復興しようとしています。敬虔なイスラム教徒との共同作業は宗教の違いを感じさせません。彼らのイスラム教は本当に穏やかな宗教であると肌で感じます。
一緒に働く中から得られるアフガンの情報と、政府やマスコミから流される情報の違いに愕然とします。日本も様々な視点からの情報を得て、日本独自の考え方を持って世界の平和をそこに住み、そこの人々と一緒に復興する手段を持たなくてはいけないと思います。それには政府やマスコミばかりでなく、心の交流をしながら共に働く民間の団体を育てていかないと、誤った選択をすることになると思います。
私たちは一切仏教の布教をしません。なぜならその地には、その地の自然や人間や風土に適した宗教があるからです。外国の異質な要素を持つ宗教を持ち込んでも、人々は幸せにはなりません。ちなみに韓国のボランティアグループはキリスト教を鮮明に打ち出して活動したようです。アフガンはまだ情勢が安定していないので、私たちは外に姿を見せません。外国人と一緒に働いていると言うだけでアフガンのスタッフにも危害が及ぶからです。そのルールを守っていれば事件は起こらなかったはずです。この事件の後日本人スタッフはアフガンから退去しています。ボランティアの心無い行動が、ボランティア活動をしにくくさせてしまったのです。