本堂の北隣に稲荷堂があり、北側の回廊に続きます。その北側の回廊が始まる付け根のところに、全久院の毘沙門様(国家鎮護・戦勝・福徳増進の仏)が安置されています。この像は清水の望月家より寄付されたものです。毘沙門天は四天王の中心的な地位を占める多聞天(ヴァイシュラヴァナ)を単独で奉る時に使われる名前です。仏国土須弥山の中腹に住み、北方を守る守護神で、吉祥天は妻といわれています。多聞天の名前の通り、仏教の教えを多く聞いて精通しており、仏教と仏教を信じるものを守護します。
甲冑を身に着け、中国の武人の姿をしています。右手を高く上げ、開いた手のひらの上に宝塔を置き、左手には金剛棒を持っています。怒りの相をしており、二体の邪鬼を踏みつけて立っています。そこで邪鬼や邪悪なものを寄せ付けないとされ、人間にとって最大の敵である煩悩を撃退するものとして信仰されました。
四天王は5世紀の仏教伝来とともに日本に伝えられました。大阪の四天王寺は聖徳太子が仏教受容に反対した物部氏を滅ぼすための祈願所にしたとされています。悪鬼が侵入するとされる北の方位を守るとされ、平安京では北方の鞍馬寺と、正門にあたる羅城門の楼上に安置されています。中国の唐の時代、西域を治める都護符が異民族に包囲されたとき、城門に毘沙門天が現れ、城を守ったという故事に基づいたとされています。楠木正成の幼名を多聞丸、上杉謙信は自らを毘沙門天の生まれ変わりと信じ、戦旗に「毘」の文字を入れるほど日本人の信仰を集めました。
現在の邪気は何でしょうか。鬼というよりは人間のあまりにも身勝手な煩悩でしょうか。世界各地での戦争、テロ、経済不安。日本での肉親間の凶悪事件、子供同士のいじめ。世界の問題から身近な問題にいたるまで、私たちの心の中の鬼、煩悩がその原因と思います。その煩悩を私たちの心の中から追い出してくれるのが毘沙門様です。全久院の北の回廊にいて、鋭い眼で私たちを見守ってくださいます。
突然の書き込みをお許しください。
宮村、国分町に20数年住みながら、一度も境内を拝見したことがありませんでした。
昨日(5月6日)朝、我が家の飼い犬が散歩でいつもは通り過ぎる貴寺にどうしても入っていくと聞かず、牛に引かれて・・・ならぬ犬に引かれて、となった次第です。
先ず山門の風神雷神に驚愕し、回廊に並んだ数多の像に魅せられ、早朝の澄んだ空気の中にたたずむ歴史を重ねたお堂に心洗われてまいりました。
実父の死を期に神道から曹洞宗に改宗し、現在は中山の蓮華寺に入檀しておりますが、もし檀家という枠を超えてお話をお聞きできたり、参禅できるようであればご案内いただきたくお願いいたします。
方丈さまの更なるご活躍をお祈りいたします。